やったぁ!正社員として採用されたぞ!カラオケ店の社員なんて楽しそうだぁぁぁ!
これから地獄に落ちるんじゃな。あ、もう落ちとるのか。
新卒社員との出会い
面接会場だった最寄りのカラオケ店へ初出勤すると、若い大学生のような人がスーツ姿で事務所に立っていました。彼は大学卒業と同時に就職する「新卒採用」の社員(仮名:若井社員)でした。
若井社員は、共にラスボス黒井部長を倒そうと協力した戦友です。この時は、お互いに夢と希望に溢れていたので、そんなことになるなんて考えもしなかったんですが。
私が恵まれていたのは、この若井社員が同期として居てくれたことです。私は中途採用ですので年齢差がありましたが、すぐに打ち解け、気づけばお互いにタメ口で気軽に話す仲になっていました。
若井社員が居ることで精神的にも楽だったんですが、もう1つ、良かったことがあります。
それは新卒採用者と中途採用者の待遇の違いに気づけたことです。
給与・賞与・労働時間・試用期間・店長への昇進スピード、「差別か!」って言うぐらい、はっきりと中途採用者とは違ったんです。ちょっと長くなりそうなので、また別の機会にこの詳細を書きますね。
中途でも新卒でも、同期は居るだけでありがたいものなんじゃな。
うん。社員同士の絆ってやつだね。
店長も善人だった
丸井店長は仕事のできる人でした。売上もガンガン伸ばし、黒井部長も「丸井さんが言うなら、、、」(丸井店長の方が10歳くらい年上なので)と一目置かれる存在で、私もとても頼りにしていました。
私と同じく中途採用者だったらしく、優しくしてくださいました。今思うと、あの優しさは、これから壮絶な地獄の日々が始まることが分かっていたからこその丸井店長の気遣いだったのかもしれません。
しかし、そんな立派な人がどうしてこんなブラック企業にいるのか。ちょっと不思議に思いませんか?
丸井店長の前職は管理職だったと聞きました。そこもとてつもないブラック企業で、体調を崩す前に辞めたのだと。おそらく、その助言をしたのは丸井店長の奥様と娘さんだと私は思っています。
というのも、奥様と娘さんが丸井店長の誕生日を祝いに、お店に来たことがあったんです。50代のサラリーマンの職場に妻と娘が来てハッピーバースデーってやばい超狂ってると思いました?カラオケ店とはいえ、ちょっと……って?
それぐらい会えなかったんでしょう。丸井店長は単身赴任者でしたし、疲れ切って眠るまで受付カウンターに立っているような人ですから。もちろん眠るのは空いているカラオケルームでですけど。
だから私にとって、丸井店長にサプライズバースデーを仕掛けた奥様と娘さんとの光景は、全然奇妙なものでは無かったんです。むしろ感動していました。
話を戻すと、丸井店長は愛する家族を養っていけるだけの安定した収入と、前職よりも体への負担が少ないと考えた職に移ったが、そこもブラック企業だった。
家族のことを考えると、転職したくてももうできない。言い出せない。
これは私の憶測です。でも私が丸井店長の立場なら、そう思っていたはずです。でも、誰にも言えない。言ってもどうしようもないですからね。
なんか、泣けてきた。