店長、いいから、来てください。
久しぶりの休日。
日々の激務で体はどこも痛いし精神的にも辛い。
でも今日は休日。
スーパーで買った刺身をつまみにビールでリフレッシュだ!!
プシュッ……。トクトクトク……。
ゴク……ゴク……ゴク…………。
プっはぁぁぁぁぁぁぁ~!!!うまい!!最高だぜ!!
マグロとブリと、この魚はなんて魚だ?まぁいいや美味い美味い!!あはは!!
…………。
……………………。
……ん?もうすぐ23時か。そろそろ寝……
トゥルルルルル、トゥルルルルル!!
げっ!?
トゥルルルルル!!問うるるるっルルルル!!!
うわ、最悪だよ。はぁ……出るか。
はい。まじめです。なんですか?
……はい。……はい。
……わかりました。行きますね。
カタギじゃねえんだぞ?
酔っぱらっていた私は徒歩で15分かけて勤めていた店舗に向かいました。
火照った顔を冷ますように、夜風が気持ちよく吹いている。
……まぁ、なんとかなるだろう。
だんだん冷静になってきた私は、クレーマー対応のマニュアルを思い出していました。
相手の話を聞いて、心を込めて謝る(フリ)。
相手の言っている問題点を解決する案を提示し、それで納得していただけないか申し出る。
最期にもう一度、謝る(フリ)。
なんて簡単なんだ。余裕じゃねーか。
……着いた。
テロリローンテロリローン。
店内に入ると、いつもの陽気なBGMと共に、怒鳴り散らす声が喫煙ルームのほうから聞こえてくる。
全然ジョイサウンドじゃない。
怒鳴り声の方に近づいていくと、黒シャツのチンピラおっさんが、おばちゃんスタッフに向かってめちゃめちゃキレてる。
まじめ「お待たせしました。店長のまじめと申します」
チンピラ「あ゛?お前が店長か?ゴラァ!」
まじめ「はい。この度は、不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」
(うっわこの人、上は長袖なのに、下は短パンだ!タバコ消せよバカ)
チンピラ「カタギじゃねぇんだぞ?俺はよ?あ゛!?」
私、あんまり仁侠映画とか見ないし、こういうセリフってよく意味がわからないんですよね。熊を撃つことを生業としてる人?
カタギ…… 仕事や生活が真っ当で着実であること。また、そのような人。 感じで書くと「堅気」。
チンピラ「おい、なんで俺が怒ってんのか、言ってみろよ?」
(怒っている客をさらに怒らせてしまうのは、店員の「とにかく謝っておけば良いでしょ」という態度だ。こういう時の店員は、自分が何について謝っているのかわかっていない。「客が怒っていることに対して謝っている」のでは、客は納得しない。アタリマエ)
まじめ店長「はい。お客様が注文してくださったメニューを退室15分前にお届けしてしまったと従業員から聞いております」
(事前にスタッフに聞いておいて良かったマジで。あっぶねww)
チンピラ「そうだよな?こんな熱々のたこ焼き、カラオケしながら15分で食べろっておかしいよな!?」
まじめ店長「はい。お食事できる時間が短すぎると思います」
(食える食える余裕で。2分で。あと熱々って、メニューに「熱々たこ焼き」って書いてあるだろ目ぇ取れてんのか?)
チンピラ「じゃあどうしてくれんだよ!?もうとっくに時間過ぎてんだぞ?」
(お前のせいでな。)
まじめ店長「申し訳ございません。うちとしましては、今からルーム利用時間を1時間程サービスさせていただきたいと考えております。お客様のお時間さえよろしければ、いかがでしょうか?」
(この時、クレーマーが怒るのは、店員のちょっとした上から目線。例えば「ルーム代は無料にします。12時まで利用していいですよ」と言ったらブチ切れられる可能性もあります。あくまで、「こちらが悪かったので、その分サービスさせていただきたいのですが、いかがでしょうか?」という態度が大切。)
チンピラ「ふん。そうか。子供も12時過ぎまで良いってことだよな?」
まじめ店長「はい。もちろんです!」
(いや聞いてねーわ知らねーわ子供いんのかよ。条例で保護者付き添いでも11時までだわ。ってことは、たこ焼き食うのオマエじゃなくて子供かよ。いやどうでもいいわ)
まじめ店長「(……やばい。このタイミングでもし警察に見回りに来られたら責任は……俺?くそがぁぁぁぁぁ!!!!)」
チンピラ「ん?どうした?」
まじめ店長「いえ、ごゆっくりどうぞ」
夜12時20分、一件落着。
退室10分前コールは急かしているように思われたらまたクレームになってしまうと思ったので、しませんでした。
すると、12時20分になって、チンピラとその家族が出てきました。ああ、奥さんはそんな感じか、だよね。うん。
そして何事もなかったかのように奥さんが会計を済ませ、帰っていきました。
警察来なくてよかった。
これが、休日を返上してクレーム処理をする具体的な例のひとつです。
お酒を飲んでいようが、風邪を引いていようが、行かなければならない。
私はこの事件以降、休日の夜はスマホの電源をオフることにしました。
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