理詰め偏差値80!全てを覆す話術を持つ男・黒井。【第一次退職舌戦】第3話

話術
30代筆者(呆然)

話は聞いてくれるんだけど、届いてないみたいなんだよね……。

転職の神様(ウインク)

本当に辞められるんじゃろうな……?

全肯定・全改善

「情の空間」での話し合いが始まった2者面談。

「情の空間」というのは、

【人は、自分の視界に入らないところの存在を「恐怖」と感じ、真正面の存在を「理性」で捉え、左右斜めの存在を「情」で感じる】というもの。

空間による心理の違い
引用:リクナビネクストジャーナル
退職面談時の図

私は部長の右斜めに座らせられましたから、見事に「情の空間」で操られることになった。

「何か、心配事があるって、聞いたけど?」

どんな感じで来るんだろう……と思ったら、ものすごく優しい声色で、なだめるように言ってきたんです。

「何てめぇ辞めるとか言ってんだよ?ぶっ〇すぞ?ああ!!?」

ってくることも想定していましたから、拍子抜けしてしまいました。

もちろん、これも黒井部長の作戦なのですが、この時は見事にその作戦にハマっていたんです。

「心配事、って言うか、会社、辞めたいんです。」

ついに、ついに言ってやったぞ!!がは!がはは!

「そうか……、何か、辞めたい理由があるのか?」

面談前、同期の若井社員と色々打ち合わせて来ました。結局のところ、最後に「でも辞めます」って言えば勝てる。そこさえ曲げなければ、勝てる。という結論に私たちは達していました。

だから、話がどんな内容になろうとも、最後に「辞めます」さえ押し通せば、退職を勝ち取れる。そう思っていました。

「残業多いし、土日は絶対休めないじゃないですか。シフトの時間もバラバラで、生活リズムなんて無いし。これがずっと続くと、体力的に厳しいのかな、と。」

そう私が言うと、

「そうだよな。店長だから残業は多くなるし、土日は稼ぎ時だからなぁ」

うんうん、と舞台俳優のような大きなアクションを付けてうなづく黒井部長。

「でもな、これからはもっと残業は減らせるし、土日のどっちかは休めるようにできるぞ?」

えっ……?マジ……?どうやって……?

「スタッフのシフトをもっと増やして、まじめが休めるようにすればいい」

そんなこと、できるの……?

「深夜のシフトだけに固定すれば、生活リズムも作れるだろ?」

あっ、確かに。大丈夫そう。

私の意見を肯定し、全て受け入れてから、「改善できるから大丈夫」と一蹴する。それをただただ繰り返す会話が続きました。

以前、古井部長補佐に辞意を伝えたところ、「自分で限界を決めるな」と言われましたが、このラスボス黒井にも同じことを言われました。

「まじめ、自分の限界をな、自分で決めちゃだめだ。もう少し頑張ってみて、限界の殻を破ってみろ!」

自分が限界だと思ったから限界なんろうが。というか限界を超えたから、限界だと気付けたんだろうが。

しかし、その時の私は、「コイツ、何を言っても『改善する』の一点張りで聞かない……。でも、本当に改善してくれたら、辞めなくても良いんじゃないかな?」と思ってしまいました。

あれだけ毎日辞めたい辞めたい言っていた私の心を、心理テクニックと話術で押さえ込んだ黒井部長。さすがだわ。

そして、私の退職を止めるための最終兵器がまだ隠されていたことを、この時の私はまだ知らなかったのです。

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投稿者: 24中(2浪4留して大学中退)

2年浪人して、やっと合格した大学を4年留年し中退した僕。 なんとか就職できた会社で待っていたのは、会社の飼い犬 「社畜犬」として理不尽な環境に耐え続ける日々だった。 嫁も子供も資産も無い。 (本当に、このままでいいのか?) ネクタイという名の首輪を外し、自由で幸せな人生を過ごすため、 一匹の犬が立ち上がった。

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