面談をする店舗に到着して、先に若井社員が黒井部長が待つ部屋に戦いに行ったんだ。
同期の若井社員がどうなるか、見ものじゃな!
若井社員vs黒井部長
「面談」は1対1で行われるので、ここからの話は若井社員が後日語ってくれた内容を元にしています。
まず、ラスボス黒井部長が温かく出迎えてくれたそうです。
「おお~!若井!まぁ座ってくれよ~」
黒井部長という人は、いちいち心理テクニックを使ってくる小賢しい人です。若井社員との面談でもその小賢しい知識を披露してきます。
「面談」といっても、内容は「退職の報告」ですから、重たい雰囲気になるのは当たりまえですよね?
だから黒井部長まで重たい空気でスタートしてしまうと、若井社員のペースになってしまう。
だから無理やりテンションを高くし、面談スタート時からペースを握りたかったんだと思います。
「若井ぃ~、何だか、部長補佐たちに色々聞いたけど、心配なことがあるんだって?」
『会社辞めたいんだって?』とは絶対に言わないんです。自分のペースが乱れますからね。
【心配なことがある】
……素晴らしい言葉のチョイス。
会社を辞めたいという気持ちを押さえつけるのではなく、心配事を取り除く方法を提示することで、退職を遠ざけていく戦法。
しかし、若井社員には通用しませんでした。
幸せとは思えない先輩が居ます。
若井社員が慕っていた先輩社員に番戸(ばんど)社員という方が居ました。
番戸社員は、「将来バンドマンとして音楽で食べていくのが夢だ」と黒井部長にも語るほど音楽が好きで、カラオケ店の店長はあくまでも通過点だとハッキリ伝えているくらい、明確な人生設計を描いている人でした。
カラオケ店の店長として働きながら、休日はバンド活動をしてメジャーになりたい。
番戸社員はそう考えて入社したと言います。
しかし、現実は違いました。
バンド活動をしている時間など無いほどの毎日の仕事量。
「休日は疲れ切った体を休めることを優先させないと、体力が持たない」
番戸社員は私にもそう言っていました。
さらに、土日祝日は職業柄休めないので、バンド仲間とセッションする日程が合わない。
彼はどんどんバンドから離れていくようになりました。
入社する時、私は土日祝日が休みにくいだけで、絶対ではないだろうし、隔週くらいで休めるだろうと思っていました。
おそらく番戸社員もそういう考えだったと思います。
その土日休みにバンド活動をしたかったんでしょう。
しかし結局、番戸社員はバンドを辞め、カラオケ店の店長として働く道を選びました。
若井社員は、親しい先輩が夢を諦めさせられる瞬間を目の当たりにして、色々思うことがあったようです。
ラスボス黒井部長にこう言ったそうです。
「部長は、番戸さんが幸せに働いているって言いますけど、どこが幸せなんですか?バンドも出来なくて、楽器もやめて、幸せなわけないでしょ」
その通り過ぎるwwwww
その後は、普通に口論になったそうです。
若井社員は名前の通り若いですから、言いたいこと全部言って辞めてやるスタイルでした。
言い争いになり、これまでに溜まった不満を全てぶつけて、もはや話し合いにはならなかったみたいです。
最後に黒井部長が、「俺の気持ちが伝わらなくて、とても残念だ」と言って面談が強制終了したそうです。
面談内容はどうあれ、見事に退職を勝ち取った若井社員。
さあ次は私の番だ。頑張るぞ!