「敗戦の夜~ラスボス部屋~」オーパス・ワンとブルーチーズで乾杯。【第一次退職舌戦】第5話。

転職の神様(笑顔)

なんじゃ。結局、辞められなかったんじゃな。負け犬じゃな。

30代筆者(驚愕)

本当は良い会社だったんだ!ブラック企業だなんて、誰が言ったんだ!あは!あははははぁあは!

敗戦後、飲みに連れていかれる

ラスボス黒井部長との「面談(退職についての相談)」が終わり、結局、私は退職を勝ち取ることができませんでした。

面談部屋を退出して事務所に戻ると、ラスボス黒井部長の手下たち「部長補佐」の4人が、会社に残ることを選択した私を複雑そうな目で見てきたことをはっきり覚えています。

それはおそらく、「会社に残ることが正解では無い」ということに気づいていた4人だからこそできる表情だったと思います。

「コイツ、じんせい、オワタ」ってwww

そして、満足そうな表情を浮かべた黒井部長が事務所に入ってきて一言。

「おう、飲み行くぞ?」

へ?って顔になりました。だって、このあと自分の店舗で働かなきゃいけない予定だったし、もう戻らないといけない時間だったし。

でも、「今日は休め。いいから」って言うんです。

すると、部長補佐の一人がどこかに電話をかけ、私のシフトを代わりに入ってくれることになりました。誰だか知らないけど、ありがとう。

そして、外が暗くなってきた夕方6時くらいから、黒井部長と私の直属の上司、古井部長補佐と3人で飲みに行くことになったのです。

オーパス・ワンとブルーチーズ

黒井部長の全おごりで飲みに連れて行ってもらえることになったので、めちゃめちゃ高い料理とお酒をガンガン頼むことにしました。

正直、「面談」で言いくるめられた感はずっと心に残っていましたし、本当に辞められなそうだからバックレ退職も視野に入ってきたなぁ……。って胸の奥では思っていました。

でも、この夜だけは、せっかく高級ワインバーに連れて行ってくれたんだから、楽しまなきゃ損。

ここでも、ワインの知識とか食べ物との相性だとか、小賢しい知識を披露してきた黒井部長。

うるせぇなぁ。つべこべ言わずに黙ってウマウマって食えよ。お前が喋ると、美味しさが半減するんだよ。……って、おごってもらってるんだった。失礼。

この時飲んだ「オーパス・ワン」というワイン。

市場価格で3万円~5万円(900ml)。

ワイングラスに注がれた150mlで5,000円くらいするのね。

私、初めて高級ワインと呼べるワインを飲みました。安いワインも美味しいのを知っているので、そんなに大差ないだろうとあなどっていました。

めっっっっっっっっちゃウマイ!!!!!

鼻から抜ける葡萄の豊潤な香りが次の一口を自然と誘う。

その気持ちを抑えながら、ブルーチーズを口に放り込む。

すると、甘味の中にゆっくりと濃厚なチーズの香ばしさが加わっていき、ワインを欲する衝動が先ほどよりも強くなっていることに気づく。

もう、抗えない。

あとは、欲望に身をゆだねるだけ。

一杯3,000~5,000円くらいするワインをガブガブ飲みまくりました。

数えてないけど10杯は飲んだと思いますwww

年収1000万:単身男の部屋

黒井部長も古井部長補佐も私も、3人ともぐでんぐでんに酔っぱらいました。

古井部長補佐は次の日が朝からの出勤だからということでタクシーで帰りました。

まぁもう朝4時だったんですけどねwww

私は夜からの出勤なので大丈夫だったんですが、始発はまだだし、黒井部長の家が近くだということで泊まらせてもらうことにしました。

黒井部長の家は、普通のアパート。2Kだったかな。

黒井部長は既婚者だけど奥さんとあんまりうまくいってないらしく、離れて単身赴任で働いている方が性に合っているらしい、と風のウワサで聞いたことがありました。

小綺麗に整理された生活感の無い部屋が2つ。

部長が、奥の寝室らしき部屋からふとんを持ってきてくれたので、ぐでんぐでんの私は「ありがふぉごぜますー」と言って眠りにつきました。

というか、もうこの時の記憶はあまりありませんwww


朝10時頃、起きたら、まぁひどい頭痛www

人生で一番つらかった二日酔いでしたwww

何とか体を起こして、周囲を見渡すと、テレビ台の横に奥様と娘さんと思われる人物が映っている写真が額縁に入れられ、大切そうに立ててあったんです。

私の目には、年収1,000万(と言われている)部長の部屋は、あまりにも寂しく、悲しく映りました。

この時、私は思ったのです。

「黒井部長も、もしかしたら被害者なのかもしれない」

ブラックな働かせ方を強要してくる黒井部長がラスボスだと思っていましたが、もしかしたら、ブラックな働かせ方を強要しているもっと上の役職がいるのかもしれない、と思ったのです。

実際、そうなのでしょうね。でも、そうだとしても、悪いのはそれを指示した側も、それに従った側も両方です。

色々ごちそうになりましたが、やっぱり退職しないとこういう人になってしまうんだな……と辞める決意を新たに固めた日になりました。

オーパス・ワン、また飲みたいなぁwww

「入社式での決意表明が最後の切り札」ラスボス黒井部長の作戦。【第一次退職舌戦】第4話

転職の神様(ウインク)

何はともあれ、辞められたんじゃろ?

30代筆者(笑顔)

あは!!!あは!!!

置かれたPCに映っていたもの

退職面談の図

こういう部屋の位置関係で「退職面談」が行われたのですが、「つくえ」の上には部長のものと思われるノートパソコンが開かれた状態でずっと「ヴゥーン」と小さなモーター音?を鳴らしていました。

常に色んな情報を他店舗と共有したり、仕事のメールをやり取りしているイメージが部長にはありましたから、特に気にはしていなかったのですが、面談が終盤に差し掛かった時、そのノートパソコンの役割がはっきりと分かったのです。

「残業もこれからは少なくなるし、土日もどっちかは休めるようなシフトを作って構わない。生活のリズムも、夜のシフトに固定すれば大丈夫だろ?」

私はもう、「確かに、その通りだなぁ」と思ってしまっていました。

「まじめ、これ、懐かしいなぁ~。覚えてるか?」

そう言って部長は、目の前のノートパソコンをこちらに向け、画面を見せてきたのです。

そこには「入社式で書いた決意表明書」がでかでかと映っていました。

入社式での様子は別の記事に書かれていますので、そちらをご覧ください。というか、そちらを見てから、また戻ってきてくださいwww

・石の上に3年も居たら病気。決意表明を書かせた本当の理由!


過去の言葉は重みが違う

黒井部長は、退職面談時の切り札として「入社式で書かせた決意表明」を出してきたんです。

黒井部長の話術で既にKO気味な私に、過去の私の言葉がマウントで殴り掛かってくる。

「石の上にも3年」

ぐはぁ!!すみません、1年ちょっとで辞めるとか言って……。

「どんな困難にも耐え抜いてみせる」

ぎゃあああ!!ごめんなさい!これが乗り越えなきゃいけない困難だったんですね……。

「まじめ、初心を忘れるなよ?まだ1年しか続けてないんだからさ。改善点も見つかった訳だし、明日から、また新しい気持ちでスタートしよう、な?」

……………。

…………………。

「…………………………はい。」

私は、結局、その日、退職を勝ち取ることが出来ませんでした。

あれだけ、同期の若井社員と何回も打ち合わせて、最後に「でも、辞めます」と押し通せば、絶対退職できると臨んだ面談だったのに。

見事にブラック企業のブラック上司に手のひらで転がされ、退職できずにガッカリするどころか、明日から残業も少なくなるし、土日もどっちか休みになるぞ!やったぜ!とテンションが上がっていました。

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理詰め偏差値80!全てを覆す話術を持つ男・黒井。【第一次退職舌戦】第3話

30代筆者(呆然)

話は聞いてくれるんだけど、届いてないみたいなんだよね……。

転職の神様(ウインク)

本当に辞められるんじゃろうな……?

全肯定・全改善

「情の空間」での話し合いが始まった2者面談。

「情の空間」というのは、

【人は、自分の視界に入らないところの存在を「恐怖」と感じ、真正面の存在を「理性」で捉え、左右斜めの存在を「情」で感じる】というもの。

空間による心理の違い
引用:リクナビネクストジャーナル
退職面談時の図

私は部長の右斜めに座らせられましたから、見事に「情の空間」で操られることになった。

「何か、心配事があるって、聞いたけど?」

どんな感じで来るんだろう……と思ったら、ものすごく優しい声色で、なだめるように言ってきたんです。

「何てめぇ辞めるとか言ってんだよ?ぶっ〇すぞ?ああ!!?」

ってくることも想定していましたから、拍子抜けしてしまいました。

もちろん、これも黒井部長の作戦なのですが、この時は見事にその作戦にハマっていたんです。

「心配事、って言うか、会社、辞めたいんです。」

ついに、ついに言ってやったぞ!!がは!がはは!

「そうか……、何か、辞めたい理由があるのか?」

面談前、同期の若井社員と色々打ち合わせて来ました。結局のところ、最後に「でも辞めます」って言えば勝てる。そこさえ曲げなければ、勝てる。という結論に私たちは達していました。

だから、話がどんな内容になろうとも、最後に「辞めます」さえ押し通せば、退職を勝ち取れる。そう思っていました。

「残業多いし、土日は絶対休めないじゃないですか。シフトの時間もバラバラで、生活リズムなんて無いし。これがずっと続くと、体力的に厳しいのかな、と。」

そう私が言うと、

「そうだよな。店長だから残業は多くなるし、土日は稼ぎ時だからなぁ」

うんうん、と舞台俳優のような大きなアクションを付けてうなづく黒井部長。

「でもな、これからはもっと残業は減らせるし、土日のどっちかは休めるようにできるぞ?」

えっ……?マジ……?どうやって……?

「スタッフのシフトをもっと増やして、まじめが休めるようにすればいい」

そんなこと、できるの……?

「深夜のシフトだけに固定すれば、生活リズムも作れるだろ?」

あっ、確かに。大丈夫そう。

私の意見を肯定し、全て受け入れてから、「改善できるから大丈夫」と一蹴する。それをただただ繰り返す会話が続きました。

以前、古井部長補佐に辞意を伝えたところ、「自分で限界を決めるな」と言われましたが、このラスボス黒井にも同じことを言われました。

「まじめ、自分の限界をな、自分で決めちゃだめだ。もう少し頑張ってみて、限界の殻を破ってみろ!」

自分が限界だと思ったから限界なんろうが。というか限界を超えたから、限界だと気付けたんだろうが。

しかし、その時の私は、「コイツ、何を言っても『改善する』の一点張りで聞かない……。でも、本当に改善してくれたら、辞めなくても良いんじゃないかな?」と思ってしまいました。

あれだけ毎日辞めたい辞めたい言っていた私の心を、心理テクニックと話術で押さえ込んだ黒井部長。さすがだわ。

そして、私の退職を止めるための最終兵器がまだ隠されていたことを、この時の私はまだ知らなかったのです。

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「恐怖・情・理性の空間」を操るマインドハッカー黒井部長と直接対決の時。【第一次退職舌戦】第2話

30代筆者(話す)

ついにこの時が来た!黒井部長を倒して、この会社をおさらばしてやんよ!

転職の神様(ウインク)

その意気じゃ!同期の若井社員に続くんじゃ!

情の空間を操る心理テクニック

私の番がついにやってきました。

先に面談を行った同期の若井社員は、既に帰ったみたいで、退職できたのかどうかその時はまだ分かりませんでした。

部屋に入ると、満面の笑みでラスボス黒井部長が出迎えてくれました。

「おおっ!まじめ!……まぁ、座ってくれよ!」

明るく振舞いながら、誘われたのは対面の席……ではなく、部長から見て「斜め右」の席でした。

退職相談時の図

「A」の席に座るものだと思っていましたから、イスを動かして「A」の位置に座ろうとしたんです。

そんな私を止め、わざわざ右斜めに座らせたんです。

すぐ、思いました。

「これ、何かあるんだろうなぁ」って。

また例の「どっかの本かテレビで見た小賢しい知識を披露」してるんだろうなぁってwww

で、後で調べたら、コレでした。

引用:リクナビネクストジャーナル

人は、自分の視界に入らない存在を「恐怖」と感じ、真正面の存在を「理性」で捉え、左右斜めの存在を「情」で感じるというもの。

確かに、ホストやキャバ嬢は客の隣に座りますし、試験の面接官は真正面に座ります。

部長はコレを知っていて、私と対面で座るのを避けた。

対面だと私と部長は「理性」で話をすることになりますから、「この会社はブラック企業だ」と冷静に判断されて、辞められてしまう。

だから「情」で訴えかける勝負をしてきたわけです。

最初から「A」の席にイスを置いていなかったのは、そういう作戦だったわけ。

ホント、小賢しいよねwww

「情の空間」は左右で別の意味を持つ

ちなみに、もっと調べてみると、「情の空間」は左右で別の意味を持っていました。

引用: リクナビネクストジャーナル
引用:リクナビネクストジャーナル

左ななめ前の「B」の席だと「親密になりたい時」ですから、退職を引き止めたい時に座る場所としては不適切ですね。

それに対して「右ななめ前」は、「取引・交渉に向く座り方」。

今回のケースにうってつけの場所です。

私の「面談」はまだ始まったばかりですが、既に部長の仕掛けたトラップに引っかかっていたわけです。

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