なんじゃ。結局、辞められなかったんじゃな。負け犬じゃな。
本当は良い会社だったんだ!ブラック企業だなんて、誰が言ったんだ!あは!あははははぁあは!
敗戦後、飲みに連れていかれる
ラスボス黒井部長との「面談(退職についての相談)」が終わり、結局、私は退職を勝ち取ることができませんでした。
面談部屋を退出して事務所に戻ると、ラスボス黒井部長の手下たち「部長補佐」の4人が、会社に残ることを選択した私を複雑そうな目で見てきたことをはっきり覚えています。
それはおそらく、「会社に残ることが正解では無い」ということに気づいていた4人だからこそできる表情だったと思います。
「コイツ、じんせい、オワタ」ってwww
そして、満足そうな表情を浮かべた黒井部長が事務所に入ってきて一言。
「おう、飲み行くぞ?」
へ?って顔になりました。だって、このあと自分の店舗で働かなきゃいけない予定だったし、もう戻らないといけない時間だったし。
でも、「今日は休め。いいから」って言うんです。
すると、部長補佐の一人がどこかに電話をかけ、私のシフトを代わりに入ってくれることになりました。誰だか知らないけど、ありがとう。
そして、外が暗くなってきた夕方6時くらいから、黒井部長と私の直属の上司、古井部長補佐と3人で飲みに行くことになったのです。
オーパス・ワンとブルーチーズ
黒井部長の全おごりで飲みに連れて行ってもらえることになったので、めちゃめちゃ高い料理とお酒をガンガン頼むことにしました。
正直、「面談」で言いくるめられた感はずっと心に残っていましたし、本当に辞められなそうだからバックレ退職も視野に入ってきたなぁ……。って胸の奥では思っていました。
でも、この夜だけは、せっかく高級ワインバーに連れて行ってくれたんだから、楽しまなきゃ損。
ここでも、ワインの知識とか食べ物との相性だとか、小賢しい知識を披露してきた黒井部長。
うるせぇなぁ。つべこべ言わずに黙ってウマウマって食えよ。お前が喋ると、美味しさが半減するんだよ。……って、おごってもらってるんだった。失礼。
この時飲んだ「オーパス・ワン」というワイン。
市場価格で3万円~5万円(900ml)。
ワイングラスに注がれた150mlで5,000円くらいするのね。
私、初めて高級ワインと呼べるワインを飲みました。安いワインも美味しいのを知っているので、そんなに大差ないだろうとあなどっていました。
めっっっっっっっっちゃウマイ!!!!!
鼻から抜ける葡萄の豊潤な香りが次の一口を自然と誘う。
その気持ちを抑えながら、ブルーチーズを口に放り込む。
すると、甘味の中にゆっくりと濃厚なチーズの香ばしさが加わっていき、ワインを欲する衝動が先ほどよりも強くなっていることに気づく。
もう、抗えない。
あとは、欲望に身をゆだねるだけ。
一杯3,000~5,000円くらいするワインをガブガブ飲みまくりました。
数えてないけど10杯は飲んだと思いますwww
年収1000万:単身男の部屋
黒井部長も古井部長補佐も私も、3人ともぐでんぐでんに酔っぱらいました。
古井部長補佐は次の日が朝からの出勤だからということでタクシーで帰りました。
まぁもう朝4時だったんですけどねwww
私は夜からの出勤なので大丈夫だったんですが、始発はまだだし、黒井部長の家が近くだということで泊まらせてもらうことにしました。
黒井部長の家は、普通のアパート。2Kだったかな。
黒井部長は既婚者だけど奥さんとあんまりうまくいってないらしく、離れて単身赴任で働いている方が性に合っているらしい、と風のウワサで聞いたことがありました。
小綺麗に整理された生活感の無い部屋が2つ。
部長が、奥の寝室らしき部屋からふとんを持ってきてくれたので、ぐでんぐでんの私は「ありがふぉごぜますー」と言って眠りにつきました。
というか、もうこの時の記憶はあまりありませんwww
朝10時頃、起きたら、まぁひどい頭痛www
人生で一番つらかった二日酔いでしたwww
何とか体を起こして、周囲を見渡すと、テレビ台の横に奥様と娘さんと思われる人物が映っている写真が額縁に入れられ、大切そうに立ててあったんです。
私の目には、年収1,000万(と言われている)部長の部屋は、あまりにも寂しく、悲しく映りました。
この時、私は思ったのです。
「黒井部長も、もしかしたら被害者なのかもしれない」
ブラックな働かせ方を強要してくる黒井部長がラスボスだと思っていましたが、もしかしたら、ブラックな働かせ方を強要しているもっと上の役職がいるのかもしれない、と思ったのです。
実際、そうなのでしょうね。でも、そうだとしても、悪いのはそれを指示した側も、それに従った側も両方です。
色々ごちそうになりましたが、やっぱり退職しないとこういう人になってしまうんだな……と辞める決意を新たに固めた日になりました。
オーパス・ワン、また飲みたいなぁwww