もう3日目か。そろそろ合宿にも慣れてきたころじゃろ?
うん!でもね、みんなイライラしてるんだ!
ルール無視で強制退去した2人
合宿の休憩時間中、人のいない隙を狙って部屋に侵入し、暗井(くらい)社員の財布を盗み取った盗田(とった)社員。
その様子は2階廊下を映す防犯カメラにしっかりと映っていた。
警察官と共に消えた盗田社員。その姿を見ることは2度と無かった。
財布が戻ってきた暗井社員。安心して気が緩んだのか中庭でタバコを悠然と吸い、強制退去。
この2人のおかげで、残された18名は殺伐とした3日目を迎えていた。
あっこれ小説じゃないからねww
私が体験した実話だからねwww
連帯責任
昔から思うんだけど、この言葉、私、大っ嫌いです。この言葉だけかざして、責任の範囲を広げる意味が分からない。
「連帯責任だ」とか言ってくるヤツがいるグループ・組織は残念ながら時代遅れのステレオタイプ。このままだと滅びていくことを自覚した方がいい。
でも、私の会社はブラック企業。
3日目の朝に「連帯責任」だからという理由で謝罪するんです。
誰に?って?
みんなが、みんなに。です。
一人ずつ登壇して、あれこれ申し訳なさそうなこと言って、最後に「以後気をつけます、すみませんでした」って。
は?なにが?なにに?って感じですよ。
他人のサイフ盗んで警察に捕まったやつと、タバコ吸っちゃダメって言われてるのに堂々と吸ったやつの責任がどうして私にあるんだ。何を謝るんだ?ってみんな顔に出てる。
でも、謝らないと先に進まないので、私も一応「心のこもったフリ謝罪」しました。
全員の謝罪が終わったら、社畜生産場の教官がパチパチパチッって拍手しながらこう言うんですよ。
「よし、お前ら今日から生まれ変わったぞ。切り替えて頑張っていこう」
生まれ変わるべきは暗井。特に盗田だろ。あとお前も生まれ変われ。
で、初日、2日目と同じように研修が始まったんですけど、教室の空気が重たいんですよ。信じられないくらい張り詰めてるっていうか。
強制的に謝罪させたせい、だ。
18人の社員全員が考えていたと思います。自分たちに責任は無いし、謝罪する必要もないのに、無理やり謝罪させられたイライラ。普通にパワハラ。
でも、そんな空気を変える「ある講義」がこの後あったんです。
女性役員による講壇
50代くらいのおばはんが颯爽と教室にやってきて壇上に上がり、会社の歴史とか辛かった経験なんかを話し始めたんです。
彼女は偉井(仮名:えらい)取締役。全国の鬼カラオケ店をマネジメントする重役です。
ありがたい話をしに、わざわざいらっしゃったんですね。
「あっそういえば昨日、サイフ盗んで捕まった社員がいましたよ!もう聞いてます?タバコ吸って帰ったヤツもいました!」
なんて言ったら私も強制退去だと、誰もが空気で悟ったはずです。
偉井取締役はトッテモえらいヒト、ゴキゲンとれ。と。
ただね、偉井さん?ひとついいですかね?
そんなにジャラジャラ宝石付けて、身振り手振りもキラキラ光ってんのに、講義なんて入ってくるわけないでしょ。
「高そう」ってだけww
取締役なのに、装いも小綺麗なものでまとめて、質素で清潔感のある恰好なら、とても好印象だったのに。
偉井さんはその逆。
「私カネモチでぇす。この会社で頑張れば私みたいになれまぁす」というオーラが出まくりで引きました。少なくとも私は引きました。
ここで私が学んだことは、偉井取締役のありがたいお言葉の数々ではなく、「どれほど偉い立場になったとしても、自分を客観的に判断できる視線を忘れない」ということでした。
もし客観的に判断できないと感じたら、屈託のない意見を自分にぶつけてくれる人を近くに置くことです。それができなければすぐに立場を捨てるべきだ。
そう思いながら、偉井取締役のありがたいお言葉の数々を用意していたメモ用紙に書くフリをする私なのであった。